はじめに – 文法よりも大事なこと
韓国語を学び始めたときに最初にぶつかる壁は、文法でも語彙でもありません。
それは「文の終わり方」で相手からの印象が大きく変わるという事実に気づくことです。
韓国語には主に2つの話し方があります:
- パンマル(반말):カジュアルでフレンドリーな話し方
- ジョンデマル(존댓말):丁寧で敬意を込めた話し方
一見すると語尾の違いにすぎませんが、
韓国文化においてこの語尾は「敬意」「距離感」「社会的ポジション」まで示す重要な要素です。
「アンニョン」 vs. 「アンニョンハセヨ」 – 小さな違いが大きな印象に
韓国では、初対面の人に「アンニョン(안녕)」とカジュアルに挨拶することはありません。
たとえ同年代であっても、まずは丁寧な「アンニョンハセヨ(안녕하세요)」を使うのが一般的です。

カジュアルな「안녕」は、親しい友人や年下の相手、子どもに使うものです。
この違いが関係性のトーンを決定づけます。
パンマルとジョンデマルの違いとは?
この2つのスタイルの主な違いは以下の通りです:
- 動詞の語尾(文末表現)
- 単語の選び方(例:「名前」vs「お名前」)
例えば「行く(가다)」という動詞を例にとると:
- パンマル:가 / 갔어 / 갈 거야
- ジョンデマル:가요 / 갔어요 / 가실 거예요

動詞の語幹は同じでも、語尾が変わるだけで相手に与える印象がまったく異なります。
「形式だけの敬語に意味はあるの?」という疑問に答える
多くの外国人学習者がこう思います:
「丁寧に話しても、本心がこもっていなければ意味がないのでは?」
「通じれば十分じゃないの?」
しかし、韓国では「何を言うか」よりも「どう言うか」が大切にされます。
丁寧さは形式ではなく、相手との関係性を大切にしているという文化的な合図なのです。

韓国文化では話し方 = 社会的ポジション
英語ではトーンや表情で礼儀を伝えることもありますが、
韓国語では文法構造そのものに敬意が組み込まれています。
- 初対面 → ジョンデマルを使う
- 親しくなってから → パンマルを使う(必ず許可を得る)
- 勝手にパンマル → 傲慢・無礼と捉えられることも
よく使われる表現:
「敬語はやめてフランクに話そう」
「もっと気楽に話してもいいですか?」
「タメ口でもいいですか?」
これはただの言い回しではなく、お互いの合意を示す文化的なサインなのです。
実生活での違い – 話し方が与える影響

カフェでの注文
- ❌「アメリカーノ 하나 줘」(「アメリカーノを一つくれ」– パンマル)
- ✅「アメリカーノ 한 잔 주세요」(「アメリカーノを一杯ください」– ジョンデマル)
前者は意地悪なわけではありませんが、
初対面の相手に命令しているように聞こえます。
サービスの場では失礼と受け取られることがあります。
お店で値段を聞く
- ❌「이거 얼마야?」(「これ、いくら?」– パンマル)
- ✅「이거 얼마인가요?」(「こちら、いくらですか?」– ジョンデマル)
語尾が少し変わるだけで、
スタッフの対応や雰囲気が大きく違って感じられるでしょう。
友人と話す vs 見知らぬ人と話す
- パンマル:「밥 먹었어?」(「ご飯食べた?」– カジュアル)
- ジョンデマル:「식사 하셨어요?(「お食事されましたか?」– 丁寧)
意味は同じですが、
前者は親しい友人との会話のように感じられ、
後者は尊敬する相手や目上の人に対する丁寧な確認になります。
タクシーに乗るとき
- ❌「홍대 가」(「弘大に行け」– パンマル)
- ✅「홍대로 가 주세요」(「弘大までお願いします」– ジョンデマル)
無礼なつもりはなくても、
パンマルは命令形に近く、緊張感を生むことがあります。
タクシー運転手はサービス提供者なので、ジョンデマルを使うことで相互の尊重が伝わります。
「流暢に話したいなら話し方を磨け」
文法や語彙の暗記も大事ですが、自然なスピーチレベルの使い分けができれば、
韓国人との信頼関係は大きく変わります。

多くの学習者がこう言います:
「パンマルとジョンデマルを意識し始めてから、人間関係がスムーズになった」
パンマルは使っちゃダメ?

いいえ、パンマル自体は悪くありません。
むしろ、パンマルを許可される=友人として認められたサインです。
ただし、勝手に使うのではなく、「招待されたとき」に使うのがマナーです。
関係性に合った話し方をすることが大切です。
まとめ – 文末ひとつで印象は変わる
韓国語は「言葉」以上に、「関係性の言語」です。

パンマルとジョンデマルの違いを理解することで、
単に話すだけでなく、「聞く」「応える」「文化に参加する」準備が整います。
次回予告
「밥 먹었어?(ご飯食べた?)」は、ただの食事確認ではありません。
次回は、韓国語の日常表現に隠された感情と文化の深い意味を掘り下げます。